ロングステイ財団、認定アドバイザーがご案内します海外旅行保険の豆知識。
本日は、これから夏休みシーズンに向けて海外旅行を楽しまれる方も多いと思いますが、
日本人が多く渡航する渡航先国の医療事情などをご紹介。
事前にお国事情を知っておくと、安心できるかもしれません。
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1.衛生・医療事情一般
上海の緯度は鹿児島県とほぼ同じで、日本と同じように四季の変化がはっきりしています。6月中旬から7月上旬までは梅雨が続き、その後訪れる夏は連日蒸し暑く、最高気温が40℃近くとなる日もあります。一方、冬は最低気温が氷点下となる日もあり、季節・気温に合わせた服装が必要となります。
衛生概念の普及はまだ十分とは言えない面もありますが、一般的な住宅や商業施設の衛生状態はおおむね良好です。水道水は、一定の安全基準を満たしていますが、泥臭いようなにおいが感じられることがあるほか、浴槽に水をためた時などに濁りが見られることもあります。これは水道管や貯水設備などが老朽化しているためだと思われます。食器・食材の洗浄や入浴・歯磨きなどには差し支えありませんが、飲用には市販の飲用水を購入したほうがよいでしょう。
上海には、日本人医師や日本語を話せる中国人医師が診療を行っている日系クリニックがいくつかあります。検査機器もよく整っており、受付けから会計まで日本語でやり取りが行われるので、日本とほぼ同じ感覚で受診できます。また、日系以外の外資系クリニックで日本人医師が診療を行っているところもあります。ただし、一般的にこれらの日系・外資系クリニックには入院設備がなく、入院を要するような病状の場合には中国系病院との連携で対処しています。また、診療時間は基本的に日中のみですが、夜間に電話によるアドバイスや応急処置を行っているところもあります。
中国系の国公立病院は、規模や役割によって1級~3級にカテゴリー分けされています。各居住地域に設置されている社区衛生服務中心は1級医院のカテゴリーで、日常の診療のほか地域住民の健診や予防接種なども行う地域密着型の病院です。2級医院は主に市内各区を対象に総合的に診療を行う中規模病院で、3級医院は市全体を対象として高度な診療を行う大規模病院です。どの病院にも、西洋医学による治療を行う西医のほかに中国の伝統的医学による治療を行う中医がいて、生薬や針灸による治療も行われています。また、2級および3級の主要な病院には、外国人や富裕層を対象とした特別部門が設置されており、診療料金は一般料金よりも高額に設定されていますが、そのぶん診療スペースは快適でスタッフも充実しています。ただし、英語を話せるスタッフは配置されていますが、日本語が話せるスタッフがいるとは限りません。
上海の医療機関を受診する際、紹介状や予約は必ずしも必要ではありませんが、多くの医療機関が予約制も導入しています。受診前にはあらかじめ電話で問い合わせたほうがよいでしょう。また、緊急時に利用する救急車(電話番号:120番)は有料で、料金は距離などによって変わってきます。救急車の台数は相対的に不足しており、また救急車に道を譲るルールが浸透していないため、救急車到着までに時間がかかることもあるようです。受診希望の医療機関がある場合にはそこへ搬送されますが、特にない場合には最寄りの病院に搬送されます。
急な病気やケガの場合、海外旅行保険や海外駐在員保険に加入しているのであれば、各保険会社のサポートラインに電話するのが一番よい選択です。契約内容にもよりますが、各保険会社提携の医療アシスタンス会社を通じて、適切な医療機関の紹介、救急車の手配、受診・入院の手配、医療通訳の手配、キャッシュレス診療、日本への移送が必要となった場合の手配などのサービスが受けられます。上述の日系・外資系クリニックや中国系病院の特別部門での診療料金は思いのほか高額となることがありますが、ほとんどの場合これらの保険が利用可能です。緊急時に手持ちの現金が足りなくて診療が受けられないなどの事態を防ぐためにも、あらかじめこれらの保険に加入しておくことを強く推奨します。また、加入者は、サポートラインの電話番号や契約内容を日ごろから確認しておく必要があります。
2.かかり易い病気・怪我
上海では特別に注意が必要な風土病はなく、邦人死亡の原因の多くは、心臓発作や脳卒中など生活習慣病に関連したものや、事故・自殺などです。なお、上海において死亡者が比較的多く念のため注意すべき感染症は、肺結核、ウィルス性肝炎、AIDS、狂犬病などです。
(1)各種生活習慣病
生活環境の変化に伴うストレスの増加や食生活の乱れにより、高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が急速に悪化したり顕在化したりする可能性があります。生活習慣病は、それ自体がはっきりとした自覚症状を示すことはあまりありませんが、本人が気付かないうちに進行して突然心臓発作や脳卒中などの致命的な状態を引き起こすことがあります。
(2)交通事故
歩行者優先という意識はなく、歩行者が横断歩道を渡っていてもどんどん車が通って行きます。また、スクーター・電動自転車・自転車の利用者が多く、自動車にとっても歩行者にとっても注意が必要です。これらの車両は専用レーンがない道路では歩道を走行し、特に前二者はかなりスピードを出していることが多く、歩行者にとって非常に危険な存在です。
(3)肺結核
患者の咳やくしゃみで飛び散った菌を吸い込むことにより感染します。多くの場合は適切な治療により治癒しますが、薬剤への耐性により治療に難渋する場合もあります。幼小児ではBCG接種を確実に受けることが発症予防に有効です。定期的に胸部レントゲン写真を含んだ健康診断を受けるよう心掛け、咳や微熱が2週間以上続く場合には医療機関を受診したほうがよいでしょう。
(4)ウィルス性肝炎
B型肝炎やC型肝炎は、注射針等の使い回し、輸血、性交渉、母子感染などで感染します。上海におけるB・C型肝炎ウィルスの保有率は日本の数倍高いので、それだけ感染リスクも高いと言えます。また、A型肝炎やE型肝炎は、主に不衛生な環境において、食べ物や水を介して感染します。ウィルス性肝炎の一部は劇症肝炎と呼ばれる重症の経過をたどることがあるほか、慢性肝炎として経過した場合には肝硬変や肝臓がんの原因となることもあります。A型肝炎とB型肝炎の予防には、ワクチンが有効です。
(5)AIDS
性交渉、注射針等の使い回し、母子感染などで感染します。AIDSの治療は年々進歩してきてはいますが、根本的治療法はまだ開発されていません。上海ではAIDS患者が年々増加傾向にあります。無防備で安易な性交渉は絶対に避けるべきです。
(6)狂犬病
狂犬病ウィルスに感染した犬や野生動物との接触により感染します。市街地で犬や野生動物を見かけることは多くはありませんが、上海市内でも散発的に狂犬病による死者が発生しています。発症した場合の治療法はなくほぼ確実に死に至りますが、ウィルスに感染しても速やかにワクチン接種を開始すれば、発症を防ぐことができます。万が一犬に咬まれた場合には早急に医療機関を受診してください。
(7)梅毒・淋病
性交渉により感染します。決して死亡率の高い疾患ではありませんが、上海では相当数の患者が発生しています。
3.健康上心がける事
各種経口感染症やインフルエンザなど、手指を介して感染する疾患は数多くあります。外出後、調理前、食事前などに、きちんと石鹸を使ってこまめに手を洗う習慣を身につけましょう。
食材は清潔で信頼できる店から購入し、肉・魚介類・卵は十分に加熱調理しましょう。野菜や果物は、生食する場合に限らず十分に洗浄しましょう。また、生食するものや調理済みの料理は、未調理の食材を扱った手で触れないように気をつけましょう。
治療中の病気がある場合には、確実に治療を継続するとともに、定期的に医療機関を受診して病状をチェックしましょう。また、現在健康であってもそれが永遠に続くとは限りませんので、定期的に健康診断を受け、生活習慣を見直すきっかけにしましょう。
外を歩く時には、青信号も歩道も全く油断はできません。常に四方八方に注意を配りながら歩きましょう。
4.予防接種
(1)赴任者に必要な予防接種
成人:A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病(動物に接触する機会が多い場合)、インフルエンザ(冬季)
小児:日本の定期予防接種のほか、A型肝炎(中学生以上)、B型肝炎、狂犬病(動物に接触する機会が多い場合)、インフルエンザ(冬季)など