北京周辺の医療事情とは?

ロングステイ財団、認定アドバイザーがご案内します海外旅行保険の豆知識。

本日は、これから夏休みシーズンに向けて海外旅行を楽しまれる方も多いと思いますが、
日本人が多く渡航する渡航先国の医療事情などをご紹介。
事前にお国事情を知っておくと、安心できるかもしれません。

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1.衛生・医療事情一般
中国は国土が広いため、気候も様々ですが、北京では、夏は気温40℃を越す日も多く、冬は零下10度を下回ります。一年を通して雨が少なく、乾燥が著しい気候です。そのため、脱水や皮膚のトラブルを起こしやすく、加湿器等を使用した湿度調整が不可欠と言えます。

全国的に大気汚染が深刻で、季節によっては大量の黄砂や柳絮と呼ばれる綿毛のような樹木の種子も飛来するため、呼吸器症状やアレルギーが出やすいようです。

北京市内の水道水は、水質検査の結果では飲水可能と発表されていますが、硬水のため下痢症状を起こし得ることや、個々の水道管・貯水タンクからの汚染の可能性を考慮しますと、ミネラルウォーターの使用を原則とし、止むを得ず水道水を使用する場合は煮沸してから飲料水として使用することを勧めます。食器や野菜・果物等の洗浄、調理用、洗面、歯磨き、うがい、洗濯等に水道水を使用するのは問題ありませんが、ホテルやアパートの水道設備によっては、衣類が洗濯によって次第に着色することもあるようです。

食品については、生鮮品、加工品を問わず、依然としてある程度の不安は残りますが、中国の人々にも食の安全への意識が高い人が目立ち始め、添加物等有毒物質対策も次第に強化され、また、有機栽培商品なども多く出回るようになりました。しかし、いずれの商品でも野菜や果物は十分に水洗いし、特に卵は日本では一般的な洗卵処理がされていないことが多いので、これも使用前に十分水洗いし、肉・魚・卵は十分に火を通して下さい。野菜も生食は避けた方が無難ですが、果物を生食する場合は、自分で皮を剥き(カットフルーツはお勧めしません)、包丁やまな板に付いた汚れが再び付着しないように注意して下さい。

北京には、外国人専用外来を持つ中国系総合病院や、英語や日本語で先進国と同様の医療が受けられる外資系クリニックがあり、その医療レベルも経済成長と共に進歩していますが、それに伴い医療費も年々高騰しており、外資系医療機関では、日本よりはるかに高額の医療費(緊急入院一日10~20万円、日本への移送数百万~一千万円)を請求されることもしばしばです。ただし、ほとんど全ての医療機関は海外旅行者保険が使用できますので、たとえ短期であっても、これらに加入しておくことを強く勧めます。一方、地方都市では、外資系医療機関はほとんどなく、未だ十分な医療が受けられるとは言えません。特に農村部では、衛生状態も悪く、本来治療の必要がないような比較的軽い病気でも死亡例の報告が見られます。また地方の場合、総じてそれほど医療費が高くない代わりに、保険が使用できる医療機関も少なくなります。

中国系病院を受診する場合、日本と大きく違うところは、一般的には最初に窓口で掛号費と呼ばれる受付料を支払い、診察医を指名(医師のランクにより診察料が異なる)します。この時、カルテ作成料として1~5元(15~75円相当)を別途請求されることもあります。また、入院や検査が予定されている場合は、受付時に保証金を預けなければならないことも多く、この金額はまちまちですが、長期入院が必要と判断されると5万元(75万円相当)程度要求する病院もあります。ただし、これらの現金も、保険に加入していれば必要ない場合もありますので、保険加入時にはキャッシュレスサービスが付加している保険を選ぶ方がより安心と言えるでしょう。

出産については、できるだけ日本で出産されることをおすすめします。北京市内の外資系病院では安全な出産も可能ですが、それでも当地の慣習や医療スタッフの知識が我が国と大きく違うことがあり、日本人にとって安心できる出産環境とは言い難いのが現状です。また、妊娠・出産に関わる医療費については海外旅行者保険の適応外であることが多いため、この点においても事前に十分検討しておいて下さい。

北京を含め大都市では特に注意を要する風土病はありませんが、最近、北京市内でも狂犬病が増加しています。また、衛生観念の低さなどからそれ以外にも多くの感染症が見られますので、常に清潔を心がけて下さい。中国居住者で使用人がいる場合は、使用人の衛生管理にも注意を払う必要があります。

2.かかり易い病気・怪我
(1)下痢症:中国で見られる多くの下痢症はウイルスや細菌に汚染された食物を摂取することによる感染性胃腸炎です。北京では特に暑くなる5月から10月に食中毒、赤痢、腸チフス等の経口伝染病とともに発病者が多く見られます。予防対策としては生水を飲まないこと、露天等で買い食いをしないこと、衛生状況の良い一流ホテル・レストラン以外ではサラダ、果物、牛乳、乳製品、生の魚介類、肉類等も汚染されているものとして対処すること等が挙げられます。しかし、ここ数年、冷蔵設備の普及により北京の衛生・生活事情は著しく改善されていますので、過度に心配することはありません。また、多くの下痢症は整腸剤と水分の補給により数日で改善しますが、時には重症化し、専門的治療が必要となる事もありますので、激しい嘔吐、下痢や血便が出現する際には医療機関を受診する必要があります。

(2)寄生虫:北京を含め大都市では少なくなりましたが、回虫、蟯虫、鞭虫等の感染が認められています。これらの寄生虫感染は虫卵に汚染された生野菜の摂取が原因とされます。現在、中国では化学肥料と農薬の使用が一般的になり、寄生虫疾患は減少しています。むしろ残留農薬が問題となっていますので野菜等は良く洗うことが必要です。
中国の湖・河川地域では住血吸虫病が見られます。しかし、中央政府の住血吸虫症撲滅運動により湖、河川地域の環境整備が始まり、住血吸虫患者は減少傾向にあります。住血吸虫は皮膚から侵入しますので、河川や湖の水にはなるべく触れないようにしましょう。

(3)マラリア:最も発症率の高い地域は中国南部の海南省、雲南省であり、湖北、貴州、四川、広東を加えた6省で全国の84%を占めています。しかし、標高1,500m以上の地域ではマラリアの危険はほとんどなく、上記各省すべての地域がマラリアに汚染されているというわけではありません。旅行先の情報を事前に入手し、防蚊対策など地域に即した予防対策を講じることを勧めます。

(4)HIV感染・エイズ、性感染症:2008年3月から、全国の死亡数トップはエイズとなりました。感染経路は血液を介するもの(麻薬の静脈注射や売血など)や性的接触による感染が多いようです。尚、中国国内の医療機関でHIV陽性と確定診断されると、政府報告、隔離措置がとられる場合もあります。 その他、淋病や梅毒といった病気の患者も多く、十分に注意が必要です。

(5)肝炎:多いのは、汚染された水や食べ物から感染するA型・E型肝炎と、汚染された血液や体液により感染するB型・C型肝炎です。
A型・E型肝炎は、都市でも散発的に見られますが、衛生状況の悪い地方では流行することもあります。E型肝炎は中国南部地域に多く、妊婦が感染すると重症化することがしばしばあります。A型肝炎の予防策としてワクチンがありますが、E型肝炎に対するワクチンはありませんので、妊婦の方は特に飲食物の衛生に注意する必要があります。
B・C型肝炎はともに血液・体液を介して感染しますので主に感染血液の輸血と感染者との性的交渉を避ければ心配はありませんが、中国にはキャリアと呼ばれるウイルス保有者が大変多いので、特に注意が必要です。 A型・B型肝炎は、ワクチンが開発されていますので予防接種をお勧めします。 中国では、肝炎による死亡数は常に上位を占め、また、ウイルス性肝炎は伝染病扱いで、強制的に隔離入院となることがあります。十分な予防対策を講じて下さい。

(6)交通事故:北京では現在、一日に約1,000台ずつ車が増えています。このうちの多くは運転にあまり慣れていないこともあり、また、マナーが悪いことも多く事故が急増しており、現在、交通事故死亡数は世界一になっています。特に日本の規則とは大きく違うところがあるため、歩行中、運転中、いずれも十分に注意をして下さい。

(7)結核:日本ではあまり多くありませんが、中国では患者数も非常に多く、未だ死亡原因の上位に位置しています。

(8)鳥インフルエンザ:中国中~南部で特にヒトへの感染が報告されていますが、今後いつ新型となって大流行するかわかりません。野鳥や鶏舎、生きた鳥を扱う市場などにはなるべく近づかないようにしましょう。

(9)狂犬病:最近は狂犬病が非常に増えており、北京市内でも感染例が報告されるようになってきました。発病するとほぼ100%死亡する恐ろしい病気です。動物に接する可能性が高い場合、地方に住む場合は前もってワクチンを打っておくことをお勧めします。狂犬病ウイルスを持っている動物は犬だけではなく、また、傷口をなめられただけでも感染することがありますので、できるだけ動物には近づかず、もし咬まれたりした場合はすぐに医療機関を受診して下さい。

(10)SARS(重症急性呼吸器症候群):コロナウイルス属の一種である、SARSウイルスによって起こる呼吸器感染症です。38度以上の高熱、呼吸器症状で発症し、悪寒、筋肉痛、頭痛、下痢などを伴うこともあります。最近は新たな患者発生はありませんが、全く危険性がなくなったわけではありません。

3.健康上心がける事
(1)生水・水道水を飲まないこと。ミネラル水、蒸留水を飲水用として使用する。また、頻繁な手洗い・うがいをこころがけ、人ごみに入らないこと。

(2)大都市の信頼できるホテル、レストランを除いて、加熱された料理以外食べないこと。加熱されたものでも、冷めた料理は食べないこと。行商人や露天商人から食べ物を買って食べないこと。

(3)旅行中の発熱、腹痛、頭痛、感冒様症状、蕁麻疹、眼症状に対して一時的に対応できるように解熱薬、胃腸薬、頭痛薬、感冒薬、抗アレルギー薬、点眼液等の携帯医薬品を用意する。

(4)緊急に現地医療を受けなければならない場合や、緊急移送が必要となる場合を想定して必ず海外旅行傷害保険に加入しておくこと。

(5)旅行先の医療情報を事前に収集し、必要な予防対策を講じ、旅行中の健康維持に留意すること。

(6)家族を同伴する際は、子供さんの母子手帳を持参することを勧めます。

(7)北京の冬は、気候と暖房設備のために著しく乾燥しますので感冒等の上気道疾患に罹患しやすく、湿度を調節する必要があります。

4.予防接種
(1)赴任者に勧奨される予防接種―成人・小児―
A型肝炎、B型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病(犬猫等動物接触の多い場合、医療機関にすぐかかれない場所に住む場合)など。

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