医療事情について

本日は、外務省から発表されている世界の医療事情をご紹介。
世界遺産「アユタヤ遺跡」など日本人に人気のある神秘の国、タイ。
医療事情のご案内です。

衛生・医療事情一般

 タイ王国は国土の大部分が熱帯モンスーン気候に属し、地方によって季節が異なり
ますが、バンコクの場合、11月から2月までの乾季、3月から5月までの暑季、6月から
10月までの雨季の3つの季節に分けられます。乾季は最高気温が30℃前後で、平均湿度
も50%前後と低く、比較的過ごし易いですが、大気汚染と相まって、一年で一番カゼ
等の呼吸器疾患の多い季節です。暑季は最高気温が38℃から40℃に達し、外を歩くと
疲労し易く、十分な休養が必要です。雨季は、暑季に比べ気温は下がるものの、湿度
が高く、食中毒などを起こし易い季節です。また、雨季には流行性結膜炎が多数見ら
れますので、外出から戻ったら、手洗いを励行して下さい。

注意すべき病気・怪我

 タイで注意すべき病気は、デング熱、HIV感染症(エイズ)、急性腸炎(いわゆる食
中毒を含む)、急性肝炎(A型肝炎)、急性上気道炎(カゼ症候群)、流行性結膜炎、
狂犬病、インフルエンザ、結核などです。

(1) デング熱はタイに滞在する日本人にとって最も罹患のリスクが高い熱帯病で、
バンコクでも感染の可能性が有ります。タイでは地方によって流行時期が異なります
が、バンコクの場合、患者が多いのは雨季の季節で、特に6月から9月にかけて流行し
ます。現在のところ、ワクチンが完成していないため、蚊に刺されないよう注意する
しか予防方法がありません。タイを含むインドシナ地域では、3年に一度大流行を起こ
す傾向があり、前回の大流行があった2001年には、全国で38万人の患者が出たと推定
されています。

(2) HIV(エイズ)感染者は現在、推定で100万人以上いると言われ、日本人でも毎
年数人がタイで発症し、死亡しています。性行為の際のコンドーム着用は、鉄則で
す。

(3) 感染性の急性腸炎(いわゆる下痢)は、頻繁に見られる疾患です。近年、タイ
の水道事情が改善し、水道水やレストランの氷などで感染する可能性はかなり低くな
りましたが、十分加熱していない海産物、特に貝類は危険です。また、調理してから
時間のたった食品は感染の原因になりますので、注意が必要です。

(4) タイでは、日本人が生カキを食べてA型肝炎になることがあります。A型肝炎は
ワクチン接種を受けることで予防が可能ですので、小児を含め、是非接種をお勧めします。

(5) 急性上気道炎は、タイ在住の日本人が最もかかり易い病気です。大気汚染が特
にひどい乾季には、外出先から戻ったら必ずうがいする習慣をつけましょう。

(6) 流行性結膜炎もタイ在住の日本人に多く見られる病気の一つです。バンコクで
は、特に雨季後半の8月から10月にかけて流行します。多くは、ウイルス性ですので、
1週間程度で自然治癒しますが、外出先から戻ったら、流れている水で手を洗うこと、
家族で別々のタオルを使用することは大切です。

(7) 狂犬病は日本では見られなくなった病気ですが、タイでは毎年患者が発生し、
数名が死亡しています。特に野外で仕事をする職種の人や観光で歩き回る人はワクチ
ン接種をお勧めします。また、万が一、犬や他の動物に咬まれた場合は、24時間以内
に病院でワクチン接種を受ければ、発病を止めることが出来ます。尚、タイでは製造
方法の異なる3種類のワクチンが接種されていますが、安全性の面から、必ずヒト二倍
体細胞培養の日本製かフランス製のワクチンを接種してもらいましょう。

(9) インフルエンザは、日本では冬に流行する病気ですが、タイでは雨季(特に6月
から9月にかけて)散発します。現在、バンコクの主な私立病院では欧米製のワクチン
の接種が可能です。

(9) 結核は、タイ在留邦人の中でも毎年のように患者が発生する、決して珍しくな
い病気です。長期滞在する方は、必ず一年に一回定期健康診断を受けて、胸部レント
ゲンを撮ってもらいましょう。

(10) タイのマラリア汚染地域は、ミャンマー国境地帯(特にメーホンソン県、ター
ク県等)とカンボジア国境地域に限定しており、バンコクやチェンマイなどの都市
部、プーケット島やサムイ島、パタヤなどのリゾート地では感染の危険は小さいで
す。

健康上心掛ける事

 食の国タイでは屋台の食べ物に食指が動きがちですが衛生管理のしっかりした店を
選ぶことをお勧めします。気温、湿度が高いので運動時は水分、塩分は十分補給して
ください。塩分補給を忘れると全身こむらがえりの原因になります。戸外では日差し
が強烈なので日焼けに注意してください。特に降雨後は多少曇っていても紫外線は強
くなります。強い紫外線を長期に浴び続けると皮膚ガンや白内障になります。エアコ
ンの効いた室内では空気が乾燥しすぎることがあり、湿度が50%以下になっているこ
とさえあります。皮膚乾燥症で慢性の皮膚掻痒に悩んでいる方もいます。室温、湿度
をモニターすることをお勧めします。虫に刺されないようにしてください。デング熱
の予防に蚊にさされないことは言うまでもありません。海岸や山にはブヨ、ヌカカと
いった吸血昆虫が生息しています。タイでは伝染病の媒介はしませんが強い痒みで長
期に苦しむことになります。どれが吸血昆虫か分からないと思いますが犯罪者と同じ
で相手から近づいてくる小さい虫には気を付けてください。

予防接種

(1) 赴任者に必要な予防接種
成人:A型肝炎、B型肝炎、破傷風は必ず受けてほしい予防接種です。狂犬病、日本脳
炎はできれば受けてください。

小児:小児の予防接種は国により種類、回数が異なりますがそれぞれの国の病気の流
行状況によって定められたものです。郷に入っては郷に従えというのが原則です。
BCGに関しては日本のものが優れているので日本で受けることをお勧めします。

現地の小児定期予防接種一覧

■初回/2回目/3回目/4回目/5回目/6回目

BCG:必須/出産時

B型肝炎:必須/出生時/1ヶ月/9ヶ月

三種混合*1:必須/2ヶ月/4ヶ月/6ヶ月/1歳半/4~6歳/10~15歳

ポリオ:(経口)必須/2ヶ月/4ヶ月/6ヶ月/1歳半/4~6歳

MMR*2:必須/1歳/4~6歳

日本脳炎:必須/1歳頃/2週後/1年後

Hib*3:推奨/2ヶ月/4ヶ月/6ヶ月

A型肝炎:推奨/5歳頃/4週後/半年後

水痘:推奨/12歳頃

*1:6回目はジフテリアと破傷風の2種混合
*2:麻疹、風疹、おたふくかぜ
*3:Hibとはインフルエンザ菌で風邪のインフルエンザとは異なります。
小児の髄膜炎、肺炎の原因菌となります。ワクチンによっては2回のこともある。

(3) 現地校入学に際して必要な予防接種:記の必須予防接種を求められるが接種し
ていないからといって入学、入園を拒否されることはない。ただし保健所の担当者が
学校に赴き接種する。

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